ほおずきを初めて見たのはいつだったろう。
枝につらなった袋が下の方は見事な夕日色。
なのに上に行くにつれて
若い緑の色をのこしているのが
なんとなく ピーマンのようだ なんて思ったりして。
袋をめくると つるんとしたまあるい玉がみつかった。
こんなに乾いた皮の中に
みずみずしくはじけそうな実が入ってるなんて
つくりもののようで おもしろくって
いつまでも見つめていたい気持ちになる。
ほおずきの実の 鳴らしかたをおしえてもらった。
どんなに実をもんで
ていねいに そうっと 種を出そうとしても
うすい皮は びりり と破れてしまう。
とても口に含んで音をだすところまでたどりつかなかった。
その人は器用に
まあるい小さなフウセンを作って
口に含んで ぶきき と鳴らしてみせる。
笛のような音色を想像していたわたしは
音のちがいにずいぶんがっかりした。
けれど 自分の破れた
だいだい色のフウセンを そっと口に入れてみた。
苦くてしぶい味が 口の中に広がって
あわてて「ぺっ」とはき出してしまった。
今でもこの季節に ほおずきを目にすると
この時部屋の中にゆれていた姿と
口の中にひろがったほろ苦い味を
なつかしく思い出してしまう。
|