カンパリソーダ



カンパリソーダのクラシック瓶

修道院のシスターは
私のペンダントを見て
にっこりとほほえむと
やさしく手を差しのべて、
あたまをそっとなででくれた。

だれかにあたまを
なでられるなんて、
さいごはいつだったのかさえ
覚えていないほどに、
とてもなつかしかった。

こどもにみられたかのようで
はずかしかった。
けれど
そのあたたかいぬくもりは、
なんだかこころをしずかに
やわらげてくれたのを覚えている。

日の当たらない中庭と
北向きのタイル貼りのシャワー室、
無機質なパイプベッドでさえ、
うち消してしまうような。

そんなミラノの想い出。


カンパリソーダのクラシック瓶
スケッチ:2000.8.14
水彩紙(中目)
水彩色鉛筆

友人の持っていたクラシックな瓶。
あまりにきれいな色なので、
ちょっと拝借してイラストに
ぐるりと言葉をまわりに書いて
透きとおった瓶をかこんでみた。

言葉は旅行の想い出。
学生時代の安旅行 泊まったミラノの修道院。
女子限定の異次元空間。

昔の人の小説か 映画でしか観たことのない、
時間のちがう不思議な空間。

シスターが見たのはスペインの蚤の市で買ったペンダント。
売り物の壺の底に ちぎれて転がっていたペンダント。
「壊れている」と安く値切って 宿で直したお気に入り・・・

買ったのはペンダントではなくて、
想い出だったのかもしれない。


ホームページトップへホームページトップへ